ちょっと聞いてほしいことがあるんです。
苫小牧の錦多峰川で、秋サケの河口規制について意見募集が始まっています。
これ、苫小牧近郊のサケ釣り民なら無関係ではいられませんよね。
今回は、胆振海区漁業調整委員会が出している資料を整理しながら、
・なぜ規制するのか
・どんな内容なのか
・本当に効果はあるのか
を考えてみようと思います。
委員会指示の目的・趣旨とは何か

まず、今回の規制の根拠は漁業法第120条第1項です。
目的は次の通りです。
当管内における近年の秋さけ来遊資源は減少の一途となっており、このままではさけます増殖の継続が困難となる恐れがあることから、資源回復に向けた措置として、増殖に必要なサケの親魚と種卵の十分な確保を目的とした繁殖保護を図ることを目的とし、管内の主要な増殖河川である錦多峰川の河口付近における採捕禁止区域及び期間を定めるもの。
つまり目的は明確で、
シロ「増殖事業を維持するため、親魚と採卵数を確保したい」
と言うことです!
これは資源管理としては極めてオーソドックスな考え方ですが、これが本当に意味があるものなのか、色んな視点から考えてみたいと思います。
規制スケジュール
意見募集要領では以下のスケジュールが示されています。
・令和8年2月12日 意見募集開始
・令和8年3月上旬 委員会指示案に係る公聴会
・令和8年3月13日 意見募集終了
・令和8年3月中旬 海区委員会指示(案)にかかる審議
・令和8年3月下旬 委員会指示発動
意見は郵送またはメールで提出可能です。
匿名は不可、氏名住所は公開の可能性あり。
胆振海区漁業調整委員会指示(案)の内容
規制内容をざっくり説明すると以下です。
対象:錦多峰川河口付近
期間:8月20日~8月31日(11日間)
区域:両岸標柱から沖合200m~300mまでの海面
期間は令和10年8月31日までの3年間
つまり、



「お盆明けから8月末までの11日間、河口沖200mはサケ・マス採捕禁止」という内容です。
胆振管内の漁獲量推移
参考資料2のグラフを見ると、胆振管内全体の漁獲量は長期的に減少傾向になっています。
平成期のピークと比較すると、近年は大幅に落ち込んでることがわかります。
グラフの出典元:胆振管内秋さけ漁獲量推移(参考資料2)
北海道全体と胆振の規模比較


続いて、国立研究開発法人 水産研究・教育機構ホームページにて公表されている、令和7年度の人工ふ化放流計画から整理します。
北海道全体の計画
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 捕獲数 | 1,119,100尾 |
| 採卵数 | 1,063,800千粒 |
| 稚魚放流数 | 924,410千尾 |
胆振地区(えりも以西の胆振)の計画
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 捕獲数 | 33,700尾 |
| 採卵数 | 33,900千粒 |
| 稚魚放流数 | 28,500千尾 |
つまり…



胆振の捕獲数は北海道全体の約3%規模。
これはまず押さえておきたいポイントです。
錦多峰川の計画
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 捕獲数 | 5,500尾 |
| 採卵数 | 5,500千粒 |
| 稚魚放流数 | 3,500千尾 |



さらに、錦多峰川の捕獲数は胆振全体の約16%規模。
この数字も押さえておきたいポイントです。
錦多峰川の親魚捕獲・採卵実績
直近データを見ると、錦多峰川の捕獲数・採卵数は年度によって大きく変動しています。
| 年度 | 捕獲数 |
|---|---|
| R1 | 18,913尾 |
| R2 | 28,002尾 |
| R3 | 14,464尾 |
| R4 | 20,917尾 |
| R5 | 6,314尾 |
| R6 | 9,213尾 |
| R7 | 14,679尾 |
| 年度 | 採卵数 |
|---|---|
| R1 | 4,480千粒 |
| R2 | 4,550千粒 |
| R3 | 4,472千粒 |
| R4 | 8,345千粒 |
| R5 | 5,176千粒 |
| R6 | 6,430千粒 |
| R7 | 11,587千粒 |
近年、捕獲数で言えば、計画の3倍~5倍程度であることがわかりました。
そして、捕獲数を考慮し、計画と照らし合わせると採卵数が比例して増えていないこともわかりました。
つまり、計画分は確保できています。
ただ、令和7年度人工ふ化放流計画集録では、胆振地区の捕獲・採卵数は道内全体から見れば決して大規模ではありません。



北海道全体のサケ捕獲数は約111万尾規模。
その中で胆振の位置づけは限定的なものになります。
8月20日~31日は本当に妥当か
ここが最大の論点になると思うのですが、
錦多峰川の本格遡上ピークは一般的に9月中旬以降。
8月下旬は
・早期群
・極一部の先行遡上魚
が主体になる可能性が高い。
つまり、
11日間の規制で確保・保護できる親魚数は限定的ではないか?
という疑問が残ります。
さらに、8月下旬は沿岸水温がまだ高く、河口滞留個体も不安定な時期です。



この短期間の規制で採卵数が劇的に改善する科学的根拠は、今回の資料からは読み取れません。
11日間という期間の有効性


仮に目的が「採卵数の確保」であったとしても、
11日間と言う期間は短く有効性に欠けるのでは?と思いますし、
この時期は唯一、釣り人がこの河口でサケ釣りできる、短い短い期間です。
そして、近年は沢山釣れる
と言うわけではありません。
私個人は、この時期をドンピシャで狙ってくるあたりが、どうしても釣り人に対しての嫌がらせに感じてしまいます。
8月末の11日間のみの河口規制が資源回復に与える影響は、統計的には極めて小さい可能性があります。
※9月1日からは別の河口規制が始まります。
規制の妥当性をどう評価するか
冷静に整理すると
【妥当な点】
・資源減少は事実
・親魚確保の必要性は理解できる
・法的根拠は明確
【疑問点】
・期間設定の科学的根拠が示されていない
・11日間の効果検証データが不明
・増殖事業規模との整合性が不透明
結論として、私は



今回の8月20日~31日の河口規制は、資源が減少している背景はあるにしても、資源回復効果としては極めて限定的であり、必要性は低いと感じています。
前回の後志海区の河口規制同様、強引な印象を受けます。
感情論ではなく、
「科学的裏付け」「実効性」
この観点からの個人的評価です。
意見募集に参加するという選択
今回のポイントにもなりますが、
意見募集は正式な制度です。
釣り人も当事者になる考えで間違っていないと思います。
賛成でも反対でもいい。
でも、データに基づいてしっかり意見を出すことが重要だと私個人は思います。
河口規制同様の事例も
今回は胆振海区の事例ですが、後志海区でサクラマスやサケを対象とした委員会指示案も出ています。
今後北海道の河口規制においては、同様の事例が増えて行くのでは?と予想しています。


まとめ
錦多峰川の河口規制、今回の指示は、
・資源減少という現実への対応
・しかし効果は限定的な可能性
・期間設定に疑問
という考えになりました。
みなさんはどう思いましたか?
意識のある方は、この機会に是非意見してみましょう。


