特に北海道の釣り人に絶大な支持がある、アワビやシェルカラー。
アワビ貼りの漁具については、バケやサケ釣りのスプーン。今はサクラマス釣りのジグなど。色んな所に用いられていますよね。今回はそのアワビ・シェルカラーで何故魚が釣れるのか考察をします!
アワビ貝の光沢理由は真珠層にあり
アワビ貝が複雑な光沢を持つ理由は、「真珠層」という特別な構造があるからです。この真珠層は、「アラゴナイト」という小さな結晶と、タンパク質などの有機物が何層にも重なってできています。
ちょっと難しいので高校生ぐらいでわかるように、この辺を詳しく解説します!
1. 真珠層のナノサイズの構造とは?
真珠層は、「アラゴナイト」という炭酸カルシウムの結晶と、タンパク質や多糖類(デンプンやゼラチンのようなもの)でできた有機物の層が交互に重なってできています。

有機物の層ってどれぐらい小さいの?
- アラゴナイトの層の厚さは約300〜500ナノメートル(nm)
- これは可視光の波長(約400〜700nm)とほぼ同じ
1ナノメートルは 1ミリメートルの100万分の1 の大きさです!とても小さいですね。



可視光の波長400~700nmって聞いたことある!
他の記事で書いたよね?



可視光については下の関連記事を読んで欲しい!


2. 光の波長と同じサイズだから「干渉」が起こる!
光は波のように進みます。
真珠層のアラゴナイトの層が光の波長と同じくらいの厚さなので、光が反射するときに波が重なったり、打ち消しあったり(干渉)します。



と言うことはどんなことなの?
- ある角度から見ると青く光る!
- 別の角度から見ると赤や紫に見える!
ということにつながるのです。
もっとわかりやすく言うと、ある色の光が強まったり、逆に消えたりします。その結果、見る角度によって違う色が見えるのです!



これに、似たような物見たことある!
そうなんです。
シャボン玉やCDの裏面が虹色に見えるのと同じ仕組みです!


ちなみに、
と、言う現象が起こってしまいます。
3. さらに「回折」が色を広げる!
アワビの真珠層には、細かい凹凸やパターンがあります。これが回折(かいせつ)という現象を引き起こし、光を広げてより鮮やかな色を作ります。これによって、アワビの貝殻は 単なる反射とは違う、深みのある独特の光沢を生み出します。



光の回折って?
- プリズムのように光を分ける働きをする!
- 細かい溝が入ったホログラムと同じ原理!
アワビカラーが複雑な光をする理由をまとめると
- 真珠層はナノメートルスケールの層でできている!光の波長と同じ!
- アラゴナイトの層は可視光の波長と同じサイズだから光の干渉が起こる!
- 回折の効果も加わって、見る角度によって色が変わる!
つまり、アワビの貝殻の光沢は、「ナノスケールの構造が作り出す、自然が生んだ美しい光のマジック」なんですね!
他にも似た例があるのですが、
クジャクの羽 → 細かい構造が光を干渉させて鮮やかな色を作る
シャボン玉 → 膜の厚さが光の波長に近いから虹色に見える
が、それにあたります。
魚でも似たようなことが起こっている
実は私は魚の魚体にも似たようなことが起こっているのことに着目しています!
私は、広島大学、山口大学、科学技術振興機構が共同発表した内容に影響を受けました。
科学技術振興機構のホームページにてプレスリリースされています。
→魚類のウロコのキラキラ光を外部磁場を変えることで制御~キラキラの元物質を疑似的なフォトニック結晶としてとらえて光干渉を解明~
この研究を見て、私なりに印象深く感じた一部の解釈は
- 魚をキラキラさせる原因である小さな鏡(グアニン結晶板)を磁場で操作し、これまで謎だった魚の体表の強い輝きの説明に成功した。
- グアニン結晶板が単に光を反射するだけではなく、ある程度透明性も有することに着目して、水に囲まれた空間で鏡が周期的に配列することがキラキラを起こす本当の原因であることを明らかにした。
- グアニン結晶板の厚みは100nm程度と薄い。
という事です。
水の中でこそ魚の輝きは生きるってことにつながってくるのかな?
グアニン結晶板がキーポイントか?


グアニン結晶板と言うのは太陽光の下、魚が隠れる際に利用していると言うのは一般的に知られていることなんですが、このグアニン結晶板があの魚のキラキラする原因の一つなのですね!
イメージでわかりやすく言うと、シャボン玉。液で見ると色、ついてないですよね?瓶に入れると透明です。
でも、シャボン玉にして光が当たると複雑な色をしていますよね?
あれはシャボン玉の表面と、その裏面で光が反射しているからそう見えるんです。
そう言った物が多層にもなっているようなイメージと言うと何となくわかるでしょうか?



それってどこかで聞いたことあるような?



あ!真珠層と似てるよね!
私個人はこの複雑な光(可視光)がアワビルアーの最大の強みだと勝手に思っていて、真珠層の可視光の波長(約400〜700nm)は紫から赤まで満遍なく全ての色が複雑に反射するので、これが魚を視覚的に反応させる要因の一つとなっているんじゃないのか?と仮説を立てています。
非常に多くの色が入っているんじゃズルいじゃない!って思うのは私だけでしょうか(笑)
ちなみに、グアニン結晶の反射板の間隔は環境に応じて変化するんですね。魚が興奮状態なんかでも色が変化したりします。
そして、魚の色覚は人間と比べてどうなっているか?という事にも注目したのですが、「魚の体色とその変化:メカニズムと行動学的意義 2016」で大島範子氏は
ヒトは網膜に,青,緑,赤の波長をそれぞれ吸収する3種の視物質(オプシンというタンパク質にレチナールという色素が結合した色素タンパク質)をもつが,魚は加えて紫の視物質も有しており,ヒトよりも色の違いを見分ける能力に優れている。さらに近年の研究では,紫外線を受容する魚,すなわちヒトには見えない紫外線が見える魚や,5種以上の視物質をもつ魚も見つかっている。
引用:魚の体色とその変化:メカニズムと行動学的意義 2016 大島範子
と、魚の色覚について述べられていました。
私個人は、魚より人間の目の方が優秀なんだろう。と勝手に思っていましたが、色の違いを見分ける能力が魚の方が優れているなんて驚きでした。
逃げる魚が恐怖やストレスを感じる。その時の色は?
ルアー釣りにおいて、魚がルアーに飛びつくのですから、それは捕食なのか、威嚇なのか。ただの興味本位なのか。
色々理由はあるのにしろ、疑似的に追われる魚から逃げている魚(ルアー)って言うストーリーなわけです。
ではその時の魚ってどんな状況なんでしょう?ってことなんですが、大島氏は先程引用させていただいた文献で、さらにこう述べられていました。
恐怖やストレスで魚の交感神経からノルエピネフリンが放出され,色素顆粒は凝集する。魚を驚かすと一般的に体色が薄くなる(興奮明化)のはそのためである。しかし,ストレス下で黒くなる魚もいる。
引用:魚の体色とその変化:メカニズムと行動学的意義 2016 大島範子
魚って驚かすと色が薄くなったり、ストレスで黒くなる魚もいるんですね。
北海道の多くの釣り人にとって、黒アワビカラーが釣れるって声を凄い耳にします。
ってことは、このアワビ・シェルカラーを多くのアングラーが激推しする理由の根本的なところって
●アワビカラーは、紫から赤色と、常に色んな光を反射しながら変化している。→魚が反応してしまう。
●黒いボディのルアーを対象とした場合、ストレスで魚の体色が薄くなる・黒くなる(変化する)→逃げるベイトに見える。
●結果、飛びついてしまう→釣れてしまう。
と言う事なのでは?と考察していました。
1点疑問に残るのはグアニン結晶板の厚み
ここま文献を読ませていただいて、一点どうしても疑問に残るのがグアニン結晶板の厚みが100nm程度ということなんです。
これを可視光の波長に換算した場合、紫外線層に該当するんですが、深紫外線に分類されて人間には見ないのです。
私なりに考えたことは、何層にも重なることで、光の反射が高まったり、干渉を起こしているのでは?と想像していたところです。
まとめ
さて、少し文献を参考にさせていただきましたが、アワビ・シェルカラーは魚を誘惑させる魅力がたっぷり詰まったルアーの一つであろう!
と、言うのが私の今回の結論です。
おそらく、黒アワビカラーを皆さん釣れるって言う、釣り人の感って言うのは、解釈は違えど、こんなところから来てるんでしょうね!って考察で今回はしめさせていただきますっ!