「オホーツクのサケは銀ピカが多いのに、日本海はブナっぽい個体が目立つのは何で?」——そんな疑問、ありますよね。特に早い時期に釣れたのに日本海のサケは鱗が落ちるような個体が少ない!と思っているのは私だけではないはず!今日は釣り人としての現場の肌感で、水温・回帰時期・系群の3つから何故なのか考察してみました。
推奨読者層はサケ釣りの中級者以上、生態に興味がある釣り人向けです。
結論
- 水温環境の違い:オホーツク沿岸は親潮・潮汐混合の影響で沿岸の低水温が持続しやすい→成熟の進行(=婚姻色の発現)が相対的にゆっくりで銀毛が残りやすい可能性。
- 日本海の暖流影響:日本海側は対馬暖流の影響で沿岸も高水温→回遊過程で成熟ホルモンの上昇が進みやすく、婚姻色(ブナ化)が出やすい可能性。
- 系群差:日本周辺のサケは河川・海域ごとに遺伝的集団構造がある→回帰タイミングや成熟進行の「傾向差」がある可能性も。

ただ、「○海域だから必ず○体色」という決定論ではなさそうな気がします。気象年・海況年により例外は普通に起こります。特に近年の海面水温偏差の大きさも無視できないと思いました!
なぜ水温がカギになるのか
低〜高水温と成熟(ホルモン)の関係
- 産卵回帰中のシロザケでは、ホルモンが沿岸→遡上過程で系統的に変化しているそうです。これは成熟進行に伴う変化で、最終的には体色・二次性徴の発現につながると予想できます。
参考:Year-to-year differences in plasma levels of steroid hormones in pre-spawning chum salmon Takeshi Onuma 1, Yoshitatsu Higashi, Hironori Ando, Masatoshi Ban, Hiroshi Ueda, Akihisa Urano - サケの婚姻色は、複数のホルモンのバランスで決まっている。テストステロン → 婚姻色を出す、皮膚を厚くする、チロキシン → 銀色を保つ(テストステロンの逆の働き)。
参考:Changes in Plasma Electrolyte and Hormene Concentrations during Homing Migration of Chum Salmon Oncorhycchus keta with Special Reference to tha Development of Nuptial Color Kiyoshi Ssahina,Tsugio Kobayashi,and Hideo Soeda 1990 - 海水温上昇すると海流パターンに変化があって、サケの回遊時間延長される。
そして、早期成熟が進み、海水適応能力低下する。結果、生存率・回帰率の低下して資源量減少のでは?



つまり「暖かい海を長く回遊」=「成熟ホルモンが進む」→婚姻色が出やすい、という生理学的メカニズムの筋道はかなり濃厚。
ただし、“水温だけ”で説明し切る実験的・因果直結の論文は限定的なので、ここは「強い示唆!」と考えた方が良いかもしれませんな!
海域ごとの“沿岸水温のリアル”
オホーツク側(低水温が残りやすい背景)
- 北海道沿岸の海面水温:海域別に日次の沿岸海面水温が公開され、網走・紋別・宗谷オホーツク側は秋季も低めに推移する局面が多い。 参考:北海道沿岸の海面水温情報(気象庁)
- オホーツクの夏季沿岸海面水温の特異性:南ほど冷たいという逆転的分布をもたらす千島列島で起こる潮汐混合の影響がありそう。表層が冷えやすい海域特性がある。
- オホーツク沿岸は親潮・潮汐混合の影響で沿岸の低水温が持続しやすい→成熟の進行(=婚姻色の発現)が相対的にゆっくりで銀毛が残りやすい可能性。



南ほど冷たいって驚きです!
日本海側(暖水の影響が強い背景)
- 対馬暖流の北上:北海道西岸まで暖水が沿岸を北上し、結果として沿岸海水温が相対的に高めに出やすい。 つまり、婚姻色(ブナ化)が出やすい可能性がある。
系群差:遺伝的背景はある?



水温の話もあるけど、私が一番注目しているのはココ。
- 日本系サケの遺伝的個体群構造:アロザイムやDNAで河川・海域ごとの分化が示され、ストック識別が進んでいます。
日本のサケは、遺伝的特徴の違いから7つの地域個体群に分かれるそうです。
参考: 日本系サケの遺伝的個体群構造 佐藤俊平 浦和茂彦 2015
地域区分 | 主な河川・海域 | 特徴 |
---|---|---|
北海道日本海地域 | 天塩川・千歳川など | 本州日本海の個体群と近縁。水温・環境が似ている。 |
オホーツク地域 | 東部(網走川・斜里川)、西部(徳志別川、湧別川、渚滑川)など | 東西でクラスターが分かれる。独自の遺伝構造。 |
根室地域 | 西別川・標津川など | 遊楽部川9月群と近い。東端系統を形成。 |
東北海道太平洋地域 | 釧路川・十勝川など | 「えりも岬以東系」として他と区別。 |
西北海道太平洋地域 | 静内川・遊楽部川など | 「えりも岬以西系」。遡上時期で遺伝差あり。 |
本州太平洋地域 | 岩手・宮城沿岸(閉伊川、盛川など) | 同一クラスター。北海道とは遺伝的差が大きい。 |
本州日本海地域 | 月光川・黒部川など | 北海道日本海系と混じる傾向あり。移殖の影響。 |
- 定置網漁獲のストック構成推定(遺伝+鱗+耳石温度標識):どの系統が、どの海域・時期に多いかを推定する研究が進展。回帰時期・回遊ルートの“傾向差”が可視化されつつあります。令和 5 年度 国際漁業資源の現況



ここから言えるのは、「日本海側には、回帰がやや遅め(=成熟進行が進みやすい)傾向の系統が混じりやすい年がある」といった可能性です。ただし、海況年に強く左右されそうです。系群=体色を1対1で結びつける証拠は限定的なので、絶対にそうだ!とは言えないです。
回帰時期の違い
地域 | 主な遡上時期 | 備考 |
---|---|---|
オホーツク海側(網走・斜里など) | 9月上旬〜10月が最盛期 | 初期遡上型が多い(河川水温が低い)。 |
日本海側(留萌・島牧など) | 9月中旬~11月が最盛期 | 河川水温が高く、遡上が遅れやすい。 |
→みなさんご存知のとおり、 オホーツク系は“早期遡上型”、日本海系は“晩期遡上型”の傾向。やはり、回帰が早ければ銀毛の個体は多いか?
ここまでの推論
- オホーツク沿岸は低水温を保ちやすい、日本海沿岸は対馬暖流で高水温寄りの場が季節的に形成されやすい。
- シロザケは回帰・遡上で成熟ホルモンが上昇→二次性徴・婚姻色が進む。温度は成熟・生殖系の進み具合に影響し得る。
- 推論: 高水温域を長く回遊→成熟進行が早い→ブナ化が沿岸でも目立つ。低水温域が続くと成熟進行が相対的に遅れ→銀毛保持が増える可能性。
- 日本周辺のサケは遺伝的ストック差がある→回帰時期・ルート差が体色の「見え方」に関係している?
- ただし!「水温→体色」を単独要因で断定はできない。年ごとの海況、ベイト状況、個体差、ストレス、採餌履歴など多数の要因が複雑に関与しているため。



海水温、遺伝的な要因が大きいような気がしますっ!
釣り人としての現実的な見解



今日は日本海、岸寄りぬるい…。ブナ混じり増えそう?



いやいや、オホーツクエリアも海水触ったら十分ぬるい時期あるよ(笑)



そうだよね!あ~混乱する(笑)



サケは生まれ育った川に帰って来るのに3年から5年もあるんだぜ!その間に色んなことはあるから、これが絶対的な理由!と決めるのは難しいよね!



もちろん、日本海側出身のサケとオホーツク海側の系統では遺伝的な要因も大きいかもね!
あえて言うのであれば!
「オホーツク=低海面水温×早期回帰で銀毛が残りやすい年がある」「日本海=暖流×季節後半でブナが出やすい年がある」——ただし年変動は大きい。
最後に
沿岸海面水温の地域差は必ず存在します!そして、オホーツク海側のサケは岸よりが比較的早く、日本海側の鮭は若干遅れてきます。そのため、若干遅れて岸寄りする日本海側のサケに婚姻色が出やすいと言うのは言い切れそうな気がします。系統による違いもあるので、その辺も影響しているのかな~?って思っています。
また、水温滞在時間の長短も影響してるのではないか?って一釣り人としての感覚はあります。
さて、みなさんはどんなことが影響してると思いますか?