トラウト釣り、難しいですよね。特に湖の釣りは!
思うように釣果が上がらないです……今回はそんな中で出会った興味深い論文を元に、「なぜマズメが釣れるのか?」を科学的視点で解説していきます。朝マズメ・夕マズメの“なんとなく釣れる時間”が、実はしっかり理屈に裏付けされていた!?
今回はニジマスのパターンを参考になぞ解きをしてみます。
ニジマスの活動時間と視覚の関係
日周活動パターンから読み解く
「朝まずめと夕まずめは釣れる」と言われる理由の裏には、ニジマスの活動パターンと視力、つまり『照度(明るさ)』が大きく関係しています。
引用する論文はこちら。
- 『水槽実験におけるニジマス日周活動と照度の刺網漁獲に及ぼす影響』
- 著者:藤森康澄、東海正、松田皎
- 出典:Nippon Suisan Gakkaishi 60(5), 577-583, 1994
- J-STAGEへのリンク
この研究では、水槽に入れたニジマスの活動量を1日の時間帯別に照度と共に計測し、魚の動きと光の強さの関係を調べています。
活動量のピークはいつ?
1992年5月10日〜12日、実験施設(大泉試験場)において照度を1日通して記録。以下の傾向が見られました。
- 照度が急激に変化するのは日の出前(4〜7時)と日の入り前後(17〜20時)
- 活動指数(activity index)はこの時間帯に合わせて急上昇
- 日中も一定量の活動は維持されるが、夜間にかけて減少
特に、日の出直前にニジマスの活動量が一気に高まり、日没直後もゆるやかながら活動を続けているのがわかります。

日出直前ってのがミソですね!
※「活動指数」とは、魚がどれくらい動いたかを表す数値のこと。数字が高いほど、活発に動いているという意味です。
照度と体内時計の関係
興味深いのは、照度0.01lx以下(つまりほぼ星明かりレベル)でもニジマスは完全には活動を止めず、若干の行動を継続している点です。
研究ではこれを、外部刺激である照度がニジマスの同調因子(zeitgeber)として働いていること、そして体内時計が照度に反応して活動パターンを決定していることを示唆しています。
つまり、マズメ時(光が急激に変化する時間)は、魚が体内時計的にも自然と行動を開始する“合図”になっている可能性があります。



大事なことは何時に明るくなるか?と暗くなるか?なんだね!
ラインが見えるか見えないか?視認性の話
ナイロンラインの見え方と照度の関係
論文では、モノフィラメントナイロン(210D/2)を使用し、水槽内で網に対するニジマスの反応を調査しています。
- 照度103lx(オフィス程度の明るさ):網の近くに近寄らず=明確に網が見えている
- 照度10-1lx(街灯や月明かりレベル):網の接触率が増える=見えづらくなってきている
- 照度10-2lx以下(星明かり〜闇夜):網の直前でも認識できていない
つまり、照度が低くなるとともに、ニジマスはラインや網といった人工物を“見分けられなくなる”のです。
※lx(ルクス)とは明るさの単位で、数字が大きいほど明るい場所を示します。たとえば、真夏の晴れた日中の屋外は約100,000lx、街灯の下は100lxくらいです。また、モノフィラメントナイロン(210D/2)は釣り糸に換算するとおおよそナイロン0.8号です。



ちっ!ラインが目視できなくなる明るさがバレちまった!
魚が油断している瞬間=釣りやすい!
これらのデータから考えると、朝マズメ・夕マズメは以下のような最高条件がそろいます
つまり、魚が動いていて、なおかつ油断している。この時間帯に釣れるのは、理にかなっているというわけです。



実は微妙に明るい時間は寝ぼけ気味だし、眠たいし、でもお腹空いてるし超油断してるぜー!
実体験との一致:支笏湖での20時ヒット
私がが支笏湖で20時ごろにニジマスをヒットさせた経験も、この論文内容と一致します。照度的にはちょうど0.01lx〜0.1lx程度。ラインは見えづらく、活動はやや残っている。これが“答え合わせ”のような釣果に繋がったのかもしれません。



あ~、日がほぼ落ちたな~。これから長い夜がはじまる。と思ったらバシュ!っと出たよね~!
まとめ:マズメ時は“科学的にも”チャンスタイム!
マズメ=釣れる時間帯、という経験則は、科学的根拠に裏付けられていたというわけですね!